【シリーズ 夫婦別姓】選択的夫婦別姓に関するシンポジウム 開催報告 (弁護士 石橋伸子)
2024 年11 月9日(土)、シンポジウム「夫婦別姓が『選択』できる社会を実現しよう。」が兵庫県弁護士会館で開催されました(主催:NPO法人 mネット・民法改正情報ネットワーク、後援:兵庫県弁護士会、神戸新聞社)。
最初に、選択的夫婦別姓第一次・第二次訴訟の弁護団長、第三次訴訟代理人である榊原富士子弁護士による選択的夫婦別姓とは何か、法務省法制審議会から民法改正案としてその導入が答申されてから約30 年もの間、実現を見ていないのはなぜかについての基調講演が行われ、現行の民法の親族相続編は敗戦直後に新憲法が成立しその後僅か6 か月程の検討期間において300 条程度の大量の条文を改正したため作業が不十分であり、速やかに見直すとされる付帯決議が付いていたのであり、見直しは必然的要請であったこと、嫡出子という用語は家制度の残滓として子どもに優劣を付けるものであること、夫婦同姓の強制も同様であること、反対派が守ると言うところの「伝統的家族」とは父系の血統を氏で見えるように残すという家父長制的な家族のことであること、選択的夫婦別姓が実現すれば女性が働きやすく活躍しやすくなり、結婚しやすくなり、子どもも産みやすくなるということであり、少子化の解消、地方創生、年金財政の好転にも関係していることなどの話しがなされました。
続いて、石橋伸子弁護士をコーディネーターとし、榊原富士子弁護士、主催者代表 坂本洋子さん、第一次夫婦別姓訴訟原告、第二次・三次訴訟を支える会副代表小國香織さん、第二次訴訟原告、三次訴訟を支える会メンバー恩地いづみさんによるパネルディスカッションが実施されました。
パネルディスカッションにおいては、民間の調査によれば2024年現在、選択的夫婦別姓制度に賛成する者の割合は7 割以上であり、若い世代では8 割~ 9 割に及んでおり、国民の多くは賛成していること、国会では与党議員の一部の意見が強く国民の意見と捻じれていること、戸籍がなくなるというのは全くのデマであること、旧姓を通称として使用することはアイデンティティ喪失・人格権侵害という本質的問題を解決しないこと、夫婦別姓が選択できない国は日本のみとなっており、パスポートのIC チップには旧姓は登載されないため、海外では「通称」が通用せず、空港やホテル、訪問先の組織でのトラブルが起き続けていること、事実婚の法的不安定さ、同じ氏であることと家族の一体感とは別のものであること、が統計資料や当事者の思いと共に語られ、選択的夫婦別姓制度の導入の機は熟しており、今まさに実現が望まれることが語られました。
台湾からの留学生も含めた会場参加者は、かぶりつくように熱心に聴講してくださり、多くの質問も寄せられ、知的興奮を覚えたという感想も寄せられました。岩をも穿つ雨垂れの一滴となりました。
(☆)榊原富士子弁護士の基調講演の講演録をこちらからお読みいただけます。ぜひご一読ください。
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本記事は「News Letter Vol.20」に掲載したものです。