株式交付の現在と今後 (弁護士 福永晃一) ― News Letter Vol.15より

◆株式交付制度の運用開始
 令和3年3月1日より、改正会社法施行による株式交付制度が導入され、株式交付によるM&Aの成立事例が出現してきました。
株式交付制度とは、株式会社(A社)が他の株式会社(B社)をその子会社とするために、B社株式をB社株主から譲り受け、その対価としてA社株式を交付する制度です(注1)

◆現時点における活用事例の考察
 本稿脱稿日(令和3年11月27日)時点において公表されている株式交付制度活用事例は5件あり(注2) 、いずれも買主(A社)が上場会社というケースでした。
 そして、5件中3件の買主(A社)は、B社経営者株主である売主が保有する株式の一部のみを取得し、B社を子会社化した後もB社経営者株主にB社経営を継続させることとしています。
 適時開示情報によると、B社経営陣にA社株式を交付することにより、B社経営陣がA社株式を保有しつつB社の経営を行うことが、B社及びA社を含めた企業グループの企業価値の向上に向けた動機付けにつながるとの判断から、このような形での株式交付を成立させているようです。
 株式交付制度は、株式対価による円滑な子会社化の実現という手続面のメリットに注目が集まっていますが、上記活用事例から、企業がグループを形成・拡大する場合において株式交付後の株式保有形態により企業グループ全体の価値向上を目指す仕組みづくりができる点も注目すべきポイントとなっています。

◆中小企業における株式交付制度活用の展望
⑴ 中小企業で株式交付制度は活用されるのか?
 株式交付制度は、買主にとってM&Aの対価の全部または一部に現金を使用する必要がないというメリットがあるものの……(続きはこちらから ⇒ News Letter Vol.15・page 10 ※注釈もこちらからご覧いただけます。)

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