インバウンド実務研修

東京第二弁護士会が開催する「インバウンド実務入門(税務・労働編)」という研修会に参加してきました。

私は、ミャンマーやインドネシアなどASEAN諸国の外資誘致政策について説明を受ける度に、外国企業から見て日本の投資環境はどのように映るのだろうかと気になっており、このような機会を以前から待ち望んでいました。

インバウンドをテーマとして、弁護士会が研修を開催するのはおそらく初めてのことではないでしょうか。このような研修が開催されることに、日本経済における外国人・外国企業への期待が高まっていることを感じます。

研修の内容は、主に税務と労務について、外国企業が日本に進出する際に必要な手続きを説明するものでした。

日本で子会社を設立しようとすると、最低限必要な主な手続きだけでも以下のようなものがあります。
・定款の認証(公証人)
・設立登記申請(法務局)
・法人設立の届出(税務署)
・給与支払事務所等の開設届(税務署)
・厚生年金保険・健康保険の新規適用届(年金事務所)
・労働保険関係成立届(労働基準監督署)
・雇用保険適用事業所設置届(ハローワーク)

さらに、通常は、税務に関しては青色申告の承認申請を、労務に関しては就業規則や36協定の届出なども行うことになります。また、新たな従業員を雇用する度に社会保険の資格取得届など、別途手続が必要です。

インドネシアでは、外国からの投資を誘致するために、これらの会社設立に関する手続をワンストップで行う制度をアピールしていました。ミャンマーでも、ティラワ経済特区内では、こうした行政手続をワンストップで行うことができます。
それと比較すると、日本の制度がいかに複雑で面倒かということがよく分かります。

各機関に届出る情報の多くは重複していますので、どこか窓口になる機関を設けさえすれば、日本でも簡単にワンストップの制度を作ることができるように思うのですが、そのような機関が存在しないということが、日本の外資誘致に対する姿勢を現しているように思いました。

なお、東京都では、国家戦略特区の一環として「東京開業ワンストップセンター」を開設し、上記のような手続を一か所で、しかも英語のサポート付で行うことができるようになっているようです。
外国の経営者からすれば日本でのビジネスは不安なことだらけでしょうから、このような行政の支援は、投資への決断を後押しすることと思います。

私も、相談を受ける立場にある者の一人として、他の士業とも連携しながら、なるべく安心して投資できる環境の構築に貢献したいと思います。

弁護士 平田 尚久

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