ニュースレターVol.9 求められるセクシュアルハラスメント対応の慎重さ(辻野智子)

求められるセクシュアルハラスメント対応の慎重さ

1 欧米では、me too運動などセクハラ被害を告発する機運が高まり、今年4月に起こった財務省の福田前事務次官のセクハラ騒動をもとに、野田聖子男女共同参画担当大臣は「セクハラは女性活躍の障壁となっており、早急に解決しなければならない課題」と発言し、新ガイドラインを早期に策定することを示唆しました。

2  民間企業を規律する男女雇用機会均等法及び同法第11条第2項に基づく指針(平成18年厚生労働省告示第615号)では、セクシュアルハラスメントは「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けること」(対価型)と「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」(環境型)と定義されています。

(1)対価型における「労働者の対応」の例として、前掲指針では拒否・抵抗・抗議が挙げられています。欧米では、「イエス・ミーンズ・イエス(yes means yes)」(イエスと言わない限り同意したことにはならない)という考え方が浸透し、例えば、カリフォルニア州では、平成26年9月、州議会が大学キャンパスで横行する性的暴行への対策として、Affirmative Consent (“yes means yes”) 法を可決し、知事が署名するに至りました。同法は性的関係を持つ際、各行動ごとに相手の同意を確認することを学生に義務づけており、沈黙や無抵抗は同意とはみなされないとしています。
 一見、周囲からは恋愛関係にあると見られていたりする場合で、「拒否・抵抗・抗議」が明確になされていないかのように見える場合でも、女性が誘いを断れる立場にあったのかどうかを十分に考慮し、望まないのに受け入れざるを得ない状況に追い込まれていたのではないかまで、慎重に検討する必要があります。

(2)また、環境型では、相手に不快な思いをさせるだけでセクシュアルハラスメントにあたることが重要です。しかし、現実には、女性が力(権力・腕力)のある男性に懸命に配慮・迎合した結果、男性が分かるようには嫌がっている素振りを見せていない場合が非常に多いのが実態です。厚労省の通達(「心理的負荷による精神障害の認定基準について」[基発第1226第1号・平成23年12月26日])でも、留意事項としてセクハラ被害者は、勤務を継続したいとか、セクハラ行為者からのセクハラの被害をできるだけ軽くしたいとの心理などから、「やむを得ず行為者に迎合するようなメール等を送ることや、行為者の誘いを受け入れることがあるが、これらの事実がセクシュアルハラスメントを受けたことを単純に否定する理由にはならない」と記載されています。

3 職場においてセクハラだと感じた場合には、勇気をもって弁護士にご相談いただき、適切な方法で企業に対して改善を求め、企業としても、従業員からセクシュアルハラスメントに係る相談の申し出があったときに、上記の各点にご留意いただく必要があります。

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