第15回 新会社法(2)〜機関設計の自由化〜

弁護士 井 口 寛 司

1 現行商法

 現行法は、有限会社においては取締役会や監査役の設置は任意で任期にも制限はないとしながら(有限会社法)、株式会社の場合は、取締役は最低3名を置かなければならず、かつ取締役会の設置を義務付け(商法)、また大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社)には監査役会、会計監査人の設置を義務付ける(商法特例法)など、取締役や取締役会、監査役など会社の「機関」と呼ばれる制度の設計については、特定の会社類型を選択すると、一定の制度が義務付けられるという考えをとっていました。資本金の規制などもそのひとつでした。
 しかし、わが国の中小企業の多くは、有限会社よりも株式会社の信用がほしいとして、株式譲渡を制限する形の株式会社形態を選択するケースが多く見られました。そこで、新会社法は、これらの実態から法を見直し、当該会社が望む会社の規模や類型に応じて機関設計を自由に行えるように改められました。


2 設計のルール

 では具体的にどのような設計が可能なのでしょうか。その方法をご説明いたします。まず、株主総会は必須の機関です。また、取締役1名もどのような場合でも置かなければなりません。その意味で、株式会社の機関の最小単位は、株主総会と取締役1名の機関構成とされることになります。これを基本とお考えください。
 
そして、次のルールに自分の会社をあてはめてください(ただし、説明からは委員会設置会社は除いてあります)。すなわち、次の(@)ないし(D)のルールです。

(@)公開会社かどうか、つまり、株式の内容として譲渡による株式取得について株式会社の承認を要する旨を定款に定めているか否か。公開会社であれば、必ず取締役会を設置しなければなりません(新法327条)。
(A)自分の会社が大会社かどうか、つまり、資本金5億円以上あるいは負債200億円以上の会社かどうか。大会社であれば、必ず会計監査人を設置しなければなりません(328条1項、2項)。
(B)そして、大会社で、かつ、公開会社であれば、必ず監査役会を設置しなければなりません(328条)。
(C)また、(@)による強制でも任意にでも、取締役会を置くと必ず監査役を設置しなければなりません(327条2項)。ただし、会計参与を置く場合は、監査役をおく必要はありません(327条2項但書)。
(D)(A)による強制でも任意にでも、会計監査人を置くと必ず監査役を設置しなければなりません(327条3項)。

3 小規模閉鎖会社の場合

 このような機関設計ルールにしたがいますと、非公開で、かつ、大会社ではない会社の場合は、株主総会と取締役1名のほかに、特段法律によって強制される要件が存在しないことになります。
 そして、次の選択ができることになります。

  @ 3名以上の取締役を選任して取締役会を置くこと。
  A 監査役、会計参与あるいは会計参与と監査役の双方を置くこと。

 ただ、取締役会を置いた場合や会計監査人を置いた場合は、(C)あるいは(D)の規制がかかってくることになります。この点について、中央大学法科大学院野村修也教授(新会社法A2Z-3号44頁)作成の図が非常に有益ですので、引用させていただきます。

4 会社の規模に応じた選択

 これまでは、株式会社組織を選択するがために、会社の規模からして特に必要ではないにもかかわらず名目上の取締役を選任したり、あるいは形式上の監査役を選任するなどして対応する必要がありました。それにより無駄なコストを要したり、場合によっては無用なトラブルの誘因にもなっていました。

 新会社法が制定された機会に、是非、自社の規模に応じた機関設計をされ、定款を見直されることをお勧めしたいと思います。