第10回 破産法が変わる(3)〜債権の優先順位の変更〜
弁護士 井 口 寛 司
1 新破産法の施行
新破産法は、本年1月1日から施行されました。裁判所は、破産申立てを受け付けた際に事件番号を付することとなっておりますが、平成17年1月1日以降に受け付けた平成17年(フ)第○○号となっている件については新破産法が適用され、平成16年以前の番号となっている件については旧破産法が適用されていることとなります。
2 債権の弁済順
今回は、新破産法における債権の優先順位が変更された点についてご説明いたします。
破産事件においては、優先して弁済される順に1番が「財団債権」、2番目は「優先的破産債権」、3番目は「破産(一般)債権」、そして4番目が「劣後的破産債権」となっています。破産管財人は、破産した会社や個人の財産を集め、現金化し、そして、債権者に配当する手続を担うわけですが、破産管財人が現金化した財産である「財団」から、まず「財団債権」を弁済し、余剰があれば「優先的破産債権」を弁済し、まだ余剰があれば「破産(一般)債権」を弁済するというように配当を行っていくわけです。
3 従前の債権の優先順位
ところで、旧破産法においては、租税債権(破産宣告前の原因に基づく租税債権及び破産宣告後の原因に基づく租税債権で破産財団に関して生じたもの)はすべて財団債権とされ、しかもその中でも最も優先される財団債権とされ、労働債権はすべて優先的破産債権とされていました。そのため、財団に比較して滞納している公租公課が多い破産の場合は、税金や社会保険料のみが弁済され、労働者の未払い債権にも配当できないといった事案が多かったのです。
4 新法の取り扱い
そこで、新法は、下記の@のとおり給料債権や退職手当の一部を財団債権として格上げし、他方でABCのように租税債権について財団債権となる範囲を限定し、かつ、Dのように他の財団債権との優先性をなくすことで、労働債権の保護が厚くなりました。
@ 財団債権となる労働債権
(1)未払い給料 破産手続開始決定前3ヶ月間に生じた給料債権
(2)退職手当(就業規則や労働協約による定めが必要)
・破産手続開始決定前に退職した場合は、退職前3か月分の給料相当額
・破産手続開始決定後に退職した場合は、退職前3ヶ月間の給料総額と破産手続開始前3ヶ月間の給料総額のいずれか多い方に相当する額
A 財団債権となる租税債権
(1)破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた租税等債権のうち、破産手続開始決定時に納期限が到来せず、または納期限(法定納期限ではなく具体的納期限)が到来して1年を経過していないもの。
(2)破産手続開始決定後の原因に基づいて生じる租税債権等で、破産財団の管理、換価及び配当に関する費用として共益費的性格を有するもの(開始決定後の固定資産税など)。
B 優先的破産債権となる租税債権
破産手続開始決定前の原因に基づいて生じた租税等債権のうち納期限が到来して1年を経過したもの。
C 劣後的破産債権となる租税債権
・ 破産手続開始決定後に発生する延滞税、利子税、または延滞金の請求権。
・ 各種加算税、加算金。
D 財団債権相互間
財団の管理、換価及び配当に関する費用など共益費的性格のある財団債権(破産管財人の報酬、開始決定後の固定資産税など)を他の財団債権に優先させ、その他の財団債権(財団債権となる租税債権等に関する延滞税や破産手続開始決定前3ヶ月の未払い給与など)はすべて同順位となる。
E 優先的債権相互間
優先債権相互間では、租税債権は、公課より優先し、公課は労働債権に優先する。
F 劣後的債権相互間
これらは原則として同順位となる。
5 改正に伴う手続
上記のとおり、財団債権、優先的破産債権の認定は以前より相当複雑となりましたので、配当においても相当慎重な配慮を要するため、破産管財人は、従前以上に配当手続に時間を要することになりそうです。