第5回 社長の個人保証が変わる
弁護士 井 口 寛 司
金融機関から融資を受ける場合、中小企業経営者は、担保があっても個人の連帯保証を求められてきました。特に、根保証の場合は、継続的な取引で保証債務が変動する保証ですので、将来のリスクも増加することになります。
そして、中小企業経営者の保証は、自宅の担保提供なども伴うところとなり、企業が倒産してしまいますと自宅などの処分を余儀なくされることから、業況が悪化しても経営者が最後の最後まで頑張り、かえって事態を悪化させ、再生できる企業までも再生の可能性を失ってしまったりすることは多く経験するところであります。
また、第三者がこれをさらに保証していた場合は、連鎖倒産のおそれもでてくるため、社長の決断はますます遅くなり事態は深刻の度を増すことになります。これは社長個人にとっても重大な問題で、自宅まで処分されてしまいますと、経営者自身のモチベーションも低下し、個人としての復活も著しく困難になってしまうのです。
そこで、今般、法務大臣の諮問機関である法制審議会は、本年2月に保証制度部会を設置し、保証のうち「包括根保証」を無効としたり、あるいは、保証期間に5年程度の法律上の制限を設けることなどを検討しはじめています。また、このたび破産法も改正されましたが、破産した場合にも破産財団を構成しないいわゆる自由財産の範囲を拡大しています。これらの手当により、中小企業の再生を可能にし新たな起業を生み出そうとしているのです。
しかし、これだけでは金融機関は、貸出金利を上げたり、経営内容の監視を強めることになるだけで、中小企業の資金繰りがよくなるわけではありません。これは、中小企業には提出先によって3つの決算書があると言われるように、その財務内容の信用性が薄いことが大きな原因です。
このため、法制審議会は、会計監査人がいない中小企業においても株主総会で公認会計士や税理士を「会計参与」(仮称)として財務諸表を作成させることができることとし、他方でこれらの専門家に重い責任を負わせることで、中小企業の財務の信頼を高めることで、金融機関からの融資において優遇を受けることができるような体制を整備することを新しい会社法において実現しようとしているようです。