第1回 短期賃貸借が変わる
弁護士 井 口 寛 司
1 はじめに
平成15年に民法等が大幅に改正され、さまざまな点で法制度が変わりました。今回は、シリーズ「法律が変わる」と題して、中小企業経営にとって有益な制度などの変更をお知らせしていこうと思います。
2 従来の短期賃貸借制度
これまでは建物が競売された場合に、その建物に設定された抵当権や根抵当権と建物を借りている賃借人との間を調整する制度として「短期賃貸借制度」がありました。
本来ならば、抵当権等の実行により建物が競売されると、抵当権等の設定後に建物を借り受けた賃借人は、競売の買受人からの退去要求に応じて建物を明渡さなければならないところを、短期賃貸借制度(現行民法395条、602条3号)により、賃借期間3年以下の建物賃貸借について一定期間に限り抵当権等に優先するとされ、直ちに明け渡しを要求されない仕組みとなっていました。
しかし、この制度は、不動産競売手続における執行妨害として利用されることも多く、抵当権者の不利益のわりには建物賃借人の保護に欠けるという批判がありました。
3 短期賃貸借制度の廃止
そこで、平成16年4月1日から、従来の短期賃貸借制度は廃止され、短期の賃貸借であっても、抵当権に遅れて設定されたものについては、抵当権に対する優先を主張できないことなり、抵当権が実行されて競売がなされると、競売による買受人は賃借人に対して建物の明渡を要求することができ、かつ、敷金返還債務についても承継しないことになりました。
4 建物明渡猶予制度
ただ、競売された建物賃借人の保護として、建物明渡猶予制度(改正民法395条)、賃借人が賃料相当額を買受人に支払うことを前提に、競落の時から6ヶ月間は退去しなくてもいいことになりました。
5 改正法の施行
これらの改正は、今年の4月1日から施行されます。ただし、今年の3月31日までに契約されていた短期賃貸借契約については従前のとおりとされています。