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第26回 労働契約法
弁護士 芝 崎 准 一
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今回は、本年の3月1日から施行されている労働契約法についてお話ししたいと思います。労働契約法は、労使間の労働契約の内容を規律する法律として平成19年11月に制定された新しい法律です。施行から2か月余りしか経過していませんので、まだあまり馴染みのない法律かもしれませんが、使用者・労働者いずれの立場に立とうと雇用契約の当事者となっている(またはなろうとする)限り労働契約法の適用を受けますので、身近で重要な法律であるということができるでしょう。
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この労働契約法は、日本の伝統的な雇用形態であった終身雇用制や年功序列制が見直され、かわって成果主義や能力主義の導入が進むなど就労形態や就労意識の多様化が進行したことに伴って、労使間で労働者ごとに個別の労働条件が決定されまた変更される場合が増加していることや、労使間の個別労働紛争が増加していることに鑑みて制定されたものです。労使間に適用される公正で透明なルールを定めることにより労働契約の内容が適正なものとなり、労働関係の安定に資することを目的としています。
これまでも労使間の雇用契約の内容を規律する法律としては労働基準法が存在していましたが、この労働基準法は、全国的・統一的な労働条件の最低基準を定めるものであって、罰則と行政官庁の監督指導をもって使用者の違反行為を取り締まるという性格を有する法律であったため、労働契約に関する一般的な規定や労働条件の最低基準に関わらない規定を同法の中に規定することは馴染まないと考えられ、新法が制定されました。
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まず同法には、労働契約は、労使が「対等の立場」における「合意」に基づいて締結し変更すべきものであるという原則が規定されています(第3条1項)。そして、第8条においても、労働条件の変更は労使の「合意」に基づいて行われることが明記されています。
しかし、労使間で個別の合意がなければ労働条件が定まらないのかというとそうではなく、新たに労働契約を締結する場合において、使用者が@合理的な労働条件が定められている就業規則をA労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるものとされています(第7条本文)。また、使用者が労働条件を就業規則の変更により変更する場合においても、@変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつAその変更が合理的なものであるときは、労働条件は変更後の就業規則の内容に変更されるものとされています(第10条本文)。
日本では、労働条件の一部を個別の合意により定める場合もありますが、多くは各企業が策定する就業規則で定められる運用となっています。そこで、就業規則が合理性・周知性を具備するか否か労使双方の視点から再検討することが必要です。
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次に、労働契約法では、出向・懲戒・解雇の各場面において権利濫用法理が適用されることが明文上明らかにされ、労働者の保護が図られることとなりました(第14条ないし第16条)。すなわち、使用者がこうした処分を行ったとしても、各条所定の事情に照らして権利を濫用したものと認められる場合には使用者の処分は無効となるのです。こうした権利濫用法理については判例が積み重ねられてきましたが、同法においてこれを明文化することによって使用者の行き過ぎた処分を防止しようとしたものです。
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以上のほかにも、労働契約法には、労働契約は労使が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結・変更すべきであるというワークライフバランス配慮義務(第3条3項)や、使用者の労働者に対する安全配慮義務(第5条)など種々の規定が置かれています。
しかし、同法が規律しているのは個別労働問題のほんの一部にすぎません。例えば、昇進や降格、配置転換、休職、転籍などといったごく日常的に起こりうる事項に関するルールについても規定がありません。こうした法内容となった背景には、同法の成立過程において労使が鋭く対立し見解の調整が困難であったため、双方が妥協し得た事項に関するものだけが規定されたという事情があるようです。
ただ、法制定に至る当初の目的を達成するためにはより網羅的な規定の整備が不可欠といえますので、今後の法改正が望まれるところです。
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