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第25回 「店長」と残業代
弁護士 芝 崎 准 一
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ご存じの方も多いと思いますが、日本マクドナルドホールディングス株式会社(以下「日本マクドナルド」といいます。)の現職の店長が同社に対して未払い残業代等の支払いを求めた訴訟において、東京地方裁判所は、本年1月28日、請求金額のうち約750万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
この判決は、業種を問わず多くの企業で行われてきた「店長」には残業代が支払われないという慣行に風穴を開けるものであったため、マスコミで大きく取り上げられ、世間の耳目をひくこととなりました。
そこで、今回はこの判決を取り上げ、一定の管理的地位にある者に対する残業代の支払いについて注意を喚起したいと思います。
■2
まず、労働契約で定められる所定労働時間を超えた労働に対しては、原則として残業代を支払う必要があり、加えて、使用者が労働者に時間外労働(1日8時間または1週間40時間を超える労働)を行わせた場合、また休日労働をさせた場合には、使用者は労働者に対し割増賃金を支払わねばならないとされています(労働基準法37条)。
しかし、例外として、労働者のうちいわゆる「管理監督者」の地位・立場にある者に対しては、使用者は、残業代の支払義務を有していません(同法41条2号)。
そこで、多くの企業では「店長」はいわゆる「管理監督者」にあたると評価して残業代の支払いを行わずに済ませてきたのであり、日本マクドナルドも同様でした。
これに対し、同事件の原告は、その実質的な権限や待遇等に鑑みれば、「店長」という肩書きを付与されていてもいわゆる「管理監督者」にはあたらないと主張して訴訟を提起したのです。背景には、一月あたり70時間を超える残業や店長になる前よりも年収が下がるといった過酷な労働状況があったもようです。
■3
東京地裁は、原告が「管理監督者」性を有するか否かについて具体的な検討を行う前に、次のように判示し一般的な判断基準について論じています。
「管理監督者については、労働基準法の労働時間等に関する規定は適用されないが、これは、管理監督者は、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、同法所定の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、また、賃金等の待遇やその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が取られているので、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、上記の基本原則に反するような事態が避けられ、当該労働者の保護に欠けるところがないという趣旨によるものであると解される。
原告が管理監督者に当たるといえるためには、実質的に以上の法の趣旨を充足するような立場にあると認められなければならない。」
■4
そして、日本マクドナルドにおける「店長」の『職務』や『権限』、『勤務態様』、『待遇』を具体的に検討し、同社における「店長」はいわゆる「管理監督者」にあたるとは認められないと結論づけました。
例えば、裁判所は、同社における「店長」が店舗の責任者としてアルバイト従業員の採用や勤務シフトの決定に関し権限を有しており店舗運営において重要な職責を負っている事実を認めましたが、ただ「店長」の職務や権限は店舗内の事項に限られるのであるから、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、労働基準法の労働時間等の枠を超えて事業活動をすることを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与されているとは認められないと認定しています。
■5
日本マクドナルドは、判決の翌日に控訴しましたので、控訴審において第一審とは異なる認定がなされる可能性があります。しかし、今回の判決はマスコミで大きく取り上げられましたので、残業代の支払いに関する労働者の関心は確実に高まったということができるでしょう。そこで、経営者としては、残業代を支給していない従業員が、その職務や権限、勤務態様等に鑑み、本当に「管理監督者」に該当するのか否か慎重に検討すべきであると思われます。
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