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第23回 盗難通帳等での不正な預金払戻し
弁護士 芝 崎 准 一
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今月19日、全国銀行協会(以下「全銀協」といいます。)から、盗難通帳を用いて、またインターネット・バンキングを利用して預金の不正な払戻しがなされた場合において、払戻しに応じた銀行に過失がない場合であっても、預金者(個人に限ります。)に過失が認められない場合には、原則として各銀行が被害の補償を行う旨の自主ルールが公表されました。
ご存じの方も多いと思われますが、預貯金の不正な払戻しがなされた場合に預貯金者を保護するための法律として、いわゆる預金者保護法(正式名称:偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律)が制定され、平成18年2月から施行されています。
しかし、同法による保護の対象は、キャッシュカードなど預貯金引出用のカードが偽造または盗難されて預貯金の払戻しに利用された場合に限定されており、盗難された預貯金通帳を用いたり、インターネット・バンキングに係る犯罪により預貯金の払戻しがなされた場合には、預貯金者は同法による保護を受けることができませんでした。ただ、こうした場合にも預貯金者を保護する必要があることは広く認識されていたため、同法を成立させるに際しては、こうした場合における預貯金者の保護の在り方について、政府や金融機関等が特段の配慮をすべきであるとの付帯決議が与野党の全会一致で採択されていました。
今回、全銀協が公表した自主ルールは、預金者保護法及び上記付帯決議の趣旨を踏まえて策定されたものであり、銀行側が自主的に預金者の保護を図ることを打ち出した点については評価することができます。しかし、預金者に過失が存した場合における各銀行の対応次第では、預金者保護法が適用される場合(盗難カード等使用の場合)と比較して預金者が保護される程度(補償割合)が下がる可能性があるため注意が必要です。
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このように全銀協が公表した自主ルールは基本的に預金者に過失が存しない場合の対応を申し合わせるものであり、預金者に過失が存した場合における補償割合の設定等については各銀行が個別に対応することになります。
ただ、全銀協が公表した資料や預金者保護法を参考にすると、各銀行において概ね次のような対応がとられることが見込まれます。
まず、盗難通帳が用いられて預金が不正に払い戻された場合、(1)預金者に過失がない場合には預金者は被害額全額の補償を受けることができますが、(2)預金者に重大な過失がある場合には全く補償を受けることができず、また(3)預金者に重過失に至らない程度ではあるが過失が認められる場合には各銀行により定められた一定割合(例えば75%等。但し、補償を受けることができない場合も想定されます。)の補償を受けることができることになるものと思われます(その他、銀行への速やかな通知や十分な説明など必要とされる要件を充たしていることを前提とします。)。
次に、インターネット・バンキングにより預金が不正に払い戻された場合においても、(1)預金者に過失がなければ被害額の全額の補償を受けることができますが、(2)預金者に過失(重過失を含む)が認められる場合には、被害に遭った預金者の態様等個別事情に鑑み個別に補償割合が判断されることになるでしょう。
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ところで、盗難通帳が用いられて預金が不正に引き出された場合において、預金者に重大な過失があることを理由に補償が行われない場合の具体例としては、@預金者が他人に通帳を渡した場合や、A預金者が他人に記入・押印済みの払戻請求書、諸届を渡した場合等が想定されているようです。
また、預金者に過失(重過失を除く)があると評価される場合としては、@通帳を他人の目につきやすい場所に放置するなど、第三者に容易に奪われる状態においた場合や、A届出印の印影が押印された払戻請求書、諸届を通帳とともに保管していた場合、またB印章を通帳とともに保管していた場合などが想定されているようです。
預金の不正な払戻しは誰もが避けたいことですが、被害に遭うか否か、また被害に遭った場合に補償を受けることができるか否かは、預金者各人がどれだけ通帳等の保管状況に注意を払っているかに左右されるということができるでしょう。これを機会に通帳や印章、払戻請求書等の保管状況やID、パスワードなどの管理状況に過失と評価される点がないかご確認ください。
以上
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