第17回   情報化社会における信用毀損

弁護士 松 谷 卓 也


■1 信用毀損情報
 新聞、雑誌、テレビ、インターネット等において無数の情報が流れている今日、中には、人や企業の信用を不当に毀損する情報も相当数見受けられます。
 例えば、埼玉県産のほうれん草等の野菜から高濃度のダイオキシンが顕出されたとのテレビ報道について謝罪広告と損害賠償請求を求めた事案、相撲協会の八百長疑惑を掲載した雑誌について謝罪広告と損害賠償請求を求めた事案など、法廷闘争にまで発展することもあります。
 特に、インターネット上の掲示板などは、誰しもが匿名で情報を発信できることから、不当に人や企業の信用を毀損する情報が多数存在しています。
 私自身の経験としても、先日、講演先の某中学校で、生徒の間でインターネットの掲示板に特定の生徒を誹謗中傷する書き込みが多数掲載されたが、学校側も加害者を特定できず、問題の対処に苦慮しているという話を聞きました。
 一般企業においても、顧客からのクレーム、競争の過熱化に伴うライバル会社からの誹謗中傷がネット上に書き込まれる可能性も十分存在し、インターネットを通じ信用が毀損される危険性は身近に存在すると思われます。
 そこで、本日は、インターネット上の信用毀損情報についてお話したいと思います。

■2 対抗措置
 インターネット上の情報は、誰しもが即座に閲覧可能であり、情報の伝播可能性が高いことからすると、企業の信用を毀損する情報を発見した場合、当該企業としては迅速な対応が要求されます。
 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任法」といいます。)3条によれば、プロバイダ等は@権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、A当該情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき、または当該情報の流通を知っていた場合であって当該情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるときには、当該情報を削除しないことによって生じた損害について賠償責任を負わないこととされています。
 そのため、インターネット上、誹謗中傷を受けている企業は、まずプロバイダ等に対して当該情報が名誉毀損に該当することを示す具体的な証拠を提出するとともに、当該情報の削除に応じなければプロバイダ責任法による免責を受けることができなくなることを指摘し、自主的な情報の削除を求めるべきでしょう。
 また、プロバイダ責任法4条によれば、一定の要件を満たせば、プロバイダへ発信者情報(氏名、住所等)の開示を請求することができますので、情報の発信者を特定し、直接、発信者に損害賠償請求を行うとともに、謝罪広告等の名誉を回復するための適当な処分を求めることも考えられます。
 さらに、企業に対する信用毀損行為については、信用毀損罪又は業務妨害罪として刑事罰の対象ともなり得ますので、刑事告訴により捜査機関による捜査を促し、加害者の情報を取得したうえで、民事上の賠償請求等の法的措置を講じることも考えられます。
 加えて、一定の要件を満たせば裁判所に当該情報の公開禁止の仮処分を求めることも可能でしょう。

■3 情報の取捨選択
 情報が氾濫し、錯綜する今日、被害者側で対抗措置を講じることは重要ですが、情報を閲覧、取得する第三者としても、情報の信憑性を精査し、取捨選択することが重要ではないでしょうか。
 数ある情報の中から、真の情報を選択すること。事実、証拠の裏づけの有無を基本において物事を見極めること。情報化社会の一員として、我々が要求されている命題ではないでしょうか。