第16回   明朗会計

弁護士 芝 崎 准 一


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 先日、電車に乗っていたところ、いわゆる消費者金融を取り扱うA社の「貸付を行う際の上限金利を18%まで引き下げました」という広告が目に留まりました。これは、いわゆる出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)の改正を先取りしたものですが、弁護士会や消費者団体が長年にわたり改善を要望していたものであり、画期的な変更ということができます。
 最近マスコミでは、借り主からのいわゆる過払い金の返還請求が増加しているために、消費者金融各社の業績が悪化しており、株価も低迷している旨の報道が頻繁になされています。ご存じの方も多いと思いますが、この過払い金の返還というのは、消費者金融各社が定める金利(例えば29.2%)と利息制限法が定める上限利率(例えば、貸付金額が金10万以上金100万円未満であれば18%)に開きがあるために生じるものです。すなわち、利息制限法においては、同法の上限利率を超える契約部分については無効となるため、借り主が払い過ぎた利息は自動的に元本に充当されることになります。こうした返済が繰り返されると、債権者から渡される書類上は債務が残っているように記載されていても、実は既に元本の返済が済んでいた! 借り主は義務なき支払いを継続させられていた! ということが起こりうるのです。そして、なぜ消費者金融各社が利息制限法を超える金利で貸付を行っていたかといいますと、従来は違反者に対する刑事罰が定められた出資法が規制する上限利息が29.2%であったために、利息制限法(違反者に対する罰則の規定はありません)を超える無効な利息の契約を結んだとしても貸し主に刑事罰が科されることがなかったからなのです。こうした利息制限法の上限利率と出資法の上限利率間の金利は、グレーゾーン金利(灰色金利)と呼ばれてきました。違法だけれども刑罰の対象にはならないので契約内容とすることを事実上黙認されてきた金利ということです。借り主側からは、根拠のない金利を支払わせられてきたことになります。

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 近年、こうした根拠のない、もしくは根拠の薄弱な金員の支払いに関する世間(社会)の目が厳しくなり、従来であれば不満を抱きながらも甘受させられてきた約定の効力が否定されることが多くなりました。
 例えば、マスコミで何度も報じられましたのでご存じの方も多いと思われますが、大学の入学試験に合格したために入学金と授業料を納めていた消費者が、新年度になる前に大学の入学を辞退した場合、消費者の大学に対する授業料の返還請求を認める裁判例が数多く出されています(入学金については入学資格を得た対価であると評価されて返還請求を否定する裁判例が多いようです)。
 また、従来は当然のように控除されていた敷引金についても返還請求を認める裁判例が出されています。さらに、結婚式の予定日まで1年以上の期間がある状況で消費者が式場の予約を取り消した場合に、予約金の返還を認めない契約条項は無効であると認定して、消費者の返還請求を認めた裁判例もあります(以上3つの事例はいずれも消費者契約法との関係で特約の効力が問題となりました)。

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 これらの裁判例からも明らかなように、他者から金員を受領するためには、その根拠を明瞭に説明することができ、客観的に見て合理的かつ相当な金員であると評価することができるものでなければなりません。今後、他者に支払義務を負わせる根拠や金額算定の根拠を合理的に説明できない金員については、請求を行うことができず、受領済みの金員については返還義務を負担しなければならなくなる可能性があります。
 金額の多寡や会社の信用性に与える影響の大きさによっては、今後の経営に大きな影響を及ぼしかねません。これまでの慣行だからと安住するのではなく、「諸経費」や「諸雑費」「手間賃」「サービス料」「○○手数料」その他の名目で請求内容が不明確なものはないか、請求の根拠や算出根拠を具体的に説明することができるか等について、これを機会に検証してみてはいかがでしょうか。
以上