第14回   野球特待制度

弁護士 田 中 朋 子


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 日本高校野球連盟(高野連)は、5月3日、全国の加盟校に対して行った、日本学生野球憲章第13条1項に違反するスポーツ特待制度の実態調査の結果を報告しました。調査結果によれば、約4200の加盟校のうち、日本学生野球憲章第13条1項に違反する特待制度を実施していた高校は376校あり、7971人もの部員が対象となっていたとのことです。
 高野連は、4月24日から調査を開始し、5月3日に結果を報告して制度の是正を求め、高校の野球部長や選手に対する処分を行うなど異例とも言える速さで対応をしました。

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 スポーツ特待制度とは、高校入学時や入学後に野球を対象として、学校側から入学金、授業料などの金銭を提供されたり、学費の軽減や免除を受ける制度をいいます(高野連定義)。
  この点、日本学生野球憲章第13条1項は、「選手または部員は、いかなる名義によるものであっても、他から選手または部員であることを理由として支給されまたは貸与されるものと認められる学費、生活費その他の金品を受けることができない」と規定しています。
  このため、高校がこのような制度を野球部員について設けている場合、日本学生野球憲章第13条1項に反することになります。
 確かに、スポーツ特待制度は、未成年の選手が野球偏重の生活を送ることになる、金銭を受領すれば、実質的にはアマチュアではなくプロと同じことになるなどの問題点が考えられなくもありません。

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 しかし、高野連の取った対応に対しては、様々な批判が集中しました。
  まず、他の部では特待制度が認められているのに対し、野球部だけが禁止されるというのは不合理かつ不平等であるという批判があります。
 また、高野連自体の体制につき、これまで、事実上見過ごしてきたスポーツ特待制度を、急遽厳格に取り締まることになったことにつき、怠慢かつ拙速であるとの批判も出ています。
 さらに、日本学生野球憲章が、学生野球人気の過熱と興業化に伴う弊害を除去するため制定された野球統制令(昭和7年)を前身とするものであって、時代にそぐわないということも指摘されています。
  概して、世間は野球部のスポーツ特待制度に対して寛容であり、スポーツ特待制度の何が問題となっているのかすら分からないと述べる人も少なくありません。スポーツ特待制度は、若者が自己の才能を伸ばすチャンスであると捉える土壌が形成されているようです。

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 高野連は、5月10日、このような世間の批判や高校等からの要請を受けた形で、高校の野球部長と部員に対する当初の処分を緩和することを決定しました。そして、特待生扱いを打ち切られた部員については、経済的な理由から退学や転校を余儀なくされる場合、高校の裁量による新たな奨学金制度の設置をすることにより救済することを認めました。ただし、この措置は、在校生が卒業するまでの暫定的なもので、来年度以降に入部する部員は適用対象外であり、来年度以降の扱いをどうするかについては別途議論を重ねるとのことです。
 現在のところ、高野連は、憲章そのものを見直すという姿勢にはいたっていないようです。

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 一般に法律は、時代の要請に応じて制定されるものであり、時代に即さないとなれば、改正する必要があります。不磨の大典と言われた憲法について、憲法改正国民投票法が成立したことや、離婚後300日後に出生した子の法律上の扱いについて規定した民法第772条について従来の運用を変える法務省通達が出され、改正自体が盛んに議論されていることは、ご記憶に新しいことと思います。
 日本学生野球憲章についても、時代の要請にあわないものになっているのであれば、一時的な運用で対応するだけでなく改正自体を検討する必要があるかも知れません。今回、高野連が批判や要請を受けて処分を緩和したということは、時代の要請を配慮したものとも考えられます。今後は、拙速と批判されないよう、日本学生野球憲章についての十分な議論や調査がなされることを期待します。
 以 上