第13回   特定商取引に関する法律

弁護士 田 中 朋 子


■1
 最高裁判所は、4月3日、有名な英会話学校を中途で退校した元受講生が受講料の未受講分の返還を求めた訴訟について、解約時に適用される同校の清算規定は、実質的には損害賠償額の予定又は違約金の定めとして機能するもので、特定商取引に関する法律の趣旨に反して受講生の自由な解約権の行使を制約するものである旨を述べ、同校の清算規定を特定商取引に関する法律49条2項1号に違反し無効とし、同校に対し、元受講生の主張する基準での過払い分の返還を命じました。

■2
 この受講システムは、料金規定に従った受講料を支払いポイントに換算して登録し、1ポイントにつき1レッスンが受講できるとし、登録ポイント数が高ければ高いほど、受講料の単価が安くなる、すなわち、「まとめて買えばお得になる。」という形式を採用しています。
 これにより、原告となった元受講生は、600回分のポイントを72万円で購入し(レッスン1回あたりの単価1200円)、386回を受講後に解約し、その際購入時の単価1200円に未受講の214回分をかけた46万3200円の返還を求めたのです。これに対して、同校は、清算規定を適用し、レッスン1回あたりの単価1550円で、実際の受講回数を基準に、400回分のポイントを購入したものとみなして、既に1550円で386回を受講済みであるとして、受講生が要求する金額の支払を拒否したため、訴訟となったわけです。

■3
 特定商取引に関する法律は、訪問販売、通信販売等特定の商取引につき、取引を公正にし、消費者の保護を図ることを趣旨としており、英会話レッスンのような契約は、特定商取引に関する法律41条1項1号が規定する「特定継続的役務提供契約」として、この法律による規制を受けます。
 そして、英会話レッスンのような契約は、サービスの内容が一見して分かるものではないことから、サービスを受ける受講者の側からは契約を結ぶ時に判断することが現実的に困難です。魅力的な内容を説く勧誘を受けて契約を結び、いざサービスを受けようとすると、期待するものと違っていたということは往々にしてあることです。
 また、特定継続的役務は期間も長期に渡るため、その途中で転居や病気などの契約時には想定していなかった事態が生じ、契約を継続するのが不合理な場合があります。
 そこで、特定商取引に関する法律49条は、一般のクーリングオフとは別に消費者に契約の中途解約権を認めています。この解約権の効果として、消費者は、契約を将来に向かって解除することができることになります。そしてこの場合、仮に損害賠償額又は違約金の定めがあったとしても、特定商取引に関する法律49条2項の定めに従った金額(提供役務対価相当額と解除によって通常生ずる損害の額として政令で定める額を合計した額)とそれに対する遅延損害金の額を加算した金額を超えてはならないとされています。

■4
 本判決は、同校の定める清算規定によれば、解約時には常に契約時より高額な受講料の単価で清算されることから、法律が保障する消費者による自由な解除権の行使を制約するものとして、清算規定を無効であると判断したのです。
 「まとめて買えばお得になる。」という売買の方法は、一般に広く認められているものです。よって、同校からすれば、多く受講するからこそお得な価格でサービスを提供したのに、途中で解約された場合、使用回数に応じて設定した対価で清算して何が悪いのかということになるかもしれません。
 しかし、消費者保護の観点を重視した本判決が出された今、同校のような清算規定を維持することは困難であり、現に、この契約方法や解約をめぐる相談が国民生活センターに相当数寄せられており、訴訟も相次いでいます。貴社の契約にこのような規定がある場合は少し注意してみていただくようお願いします。
以上