第11回   赤ちゃんポスト

弁護士 田 中 朋 子


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 「赤ちゃんポスト」と何の前提もなく聞くと、一体何を思い浮かべるでしょうか。一瞬何のことか分からない方が多いのではないでしょうか。
 「赤ちゃんポスト」とは、 熊本市の慈恵病院が、育児が困難な親から新生児を預かる制度として、昨年12月に設置を熊本市に申請していたものです。
 その仕組みは、人目につきにくい病院の外壁に扉を設け、36度に温度管理された保育器を設置しておき、赤ちゃんが入れられるとその重さでセンサーが感知し、24時間態勢で待機する職員らが赤ちゃんを保護するというものだそうです。
 「赤ちゃんポスト」は、法律的には、刑法の保護責任者遺棄罪や児童福祉法、児童虐待防止法などの規定に抵触しないかという問題がありますが、厚生労働省は2月22日、「現行法では明らかに違反とは言い切れない」との回答を示しました。

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 しかし、「赤ちゃんポスト」の問題点は、法的な側面よりむしろ社会的・倫理的な側面にあると思われます。
 最も懸念されているのが、「捨てても大丈夫」という考えからくる育児放棄の助長です。親の責任という観点からは、産むだけ産んで後は放置するという無責任な姿勢を助長するような制度は、認められるべきでないという見解にも一理あります。
 これに対し、赤ちゃんの生命保護という観点から判断すれば、近時の乳幼児に対する虐待・致死の増加もあり、設置の必要性も否定できません。

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 テレビやネット上のアンケートを見るに、賛否両論で、数はほぼ拮抗している様相です。ただ、寄せられた意見の数の多さ、同じ賛成派・反対派の中でもその理由の多様さから、国民がこの問題に強い関心を寄せていることが分かります。虐待のニュースが多いことに加え、急激な少子化に伴い、子供をいかに保護育成していくかが重要な社会問題としてとらえられているからでしょう。

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 ポストの概念自体についてここで是非を論じるつもりはありませんが、その運用の仕方についても様々な問題があるように思われます。
 慈恵病院の案では、ポストに監視カメラはつけず、親がもう一度引き取りたくなったら引き取れるようにするとのことです。親に赤ちゃんを預けやすくさせるため、また、任意の引取りに期待するという趣旨でしょう。しかし、赤ちゃんが成長したときに生じるであろう自己の出自を知る権利に答え、また、一時的であれ赤ちゃんを捨てるということに対する責任を自覚させるべく、身元は明らかにするなどの方法をとることを検討してもよいのではないでしょうか。

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 赤ちゃんポストの先進国ドイツでは、2000年に設置が始まり、現在では、約80の施設があるようですが、未だ合法化されたわけではなく、法的位置づけは曖昧なままのようです。数からすると需要があるようにも思われますが、実際どれだけの効果が上がっているのか明確ではなく、またポストの起源となった宗教的な背景も日本とは異なることから、そのまま参考になるというわけではなさそうです。

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 あらゆる制度について言えることですが、結局のところ、「赤ちゃんポスト」の効用は、実際にスタートしてみなければ分からないものだと思います。ポストが利用されることが少ないことを願いつつ、実際の運用を見守りたいと思います。