第8回   株主優待券

弁護士 松 谷 卓 也


■1 株主優待制度
 近年、株主優待を実施する企業が増加してきており、日本では1000社を超えると言われています。例えば、大手レコード会社であるエイべックスは、浜崎あゆみといった人気アーティストのライブを株主優待の一環として行っており、子供が親に浜崎あゆみのライブに行くためにエイべックスの株を買うようせがむ現象が起こっていると聞きます。
 ところでこのような株主優待制度とは、法律上どのように位置付けられるのでしょうか。

■2 株主平等原則
 会社法を支配する原則として、株主は株主としての資格に基づく法律関係においては、「その有する株式の内容および数に応じて平等の取扱いを受けるべきである」という株主平等の原則があります。例えば、株主は会社の利益配当においては有する株式数に応じて平等に配当を受ける権利があります。株式会社は、公衆から広く資本を集め、その資本を元に広く利益を上げることを一つの目的にしており、かかる目的達成のためには、株主を差別していては一般の株主は株を購入する意欲を失いますし、株式会社は株主のものなのですから、これを不当に差別することが許されないことは当然でしょう。
 そして株主優待制度が、利益配当の実質を有するような場合、例えば会社が配当できないような経済状態にも関わらず、株主優待券を一部の大株主等にのみ配布し、特定の株主を利することを目的とする場合は、違法配当となるばかりでなく、株主平等原則にも反し無効なものとなるおそれがあります。

■3 消費者の台頭と株主優待券の適法性
 現代は消費者台頭の時代です。金融機関の預貯金額においても、個人の預貯金が年 々 増加傾向にありますし、株式の世界においても個人投資家が増加してきています。そのような中、個人消費者の動向・ニーズに応えることは企業の生き残りにとって必須といえます。
 そして株主優待制度を実施し、当該企業の商品、サービスを個人株主に楽しんでもらうことは、企業に対する理解を深め、イメージアップにもつながり、株主が会社の所有者であるという会社法のテーゼをより身近なものにするといえます。実際某ビール会社では、個人株主を増やすことによって個人株主の当該ビールの購買意欲を高め、売上げ増加に繋がったという話も聞きます。このように、株主優待制度の経済効果として企業自体の利益が増加することは、究極的には総株主の利益にも合致しているといえます。
 したがって、個人投資家のための株主優待制度は、一定株式以上を保有する株主であること、という株主優待券を配布するかどうかの基準が特に高額にならなければ、一部の大株主を利する不当なものとはいえず株主平等原則に反しないと思われます。
 株主優待制度の導入が配当と異なり、一般的に株主総会の承認が要らないことも(配当の実質を有し、一部の大株主を利するようなものは別ですが)実質的にみて株主平等原則に反しないことを前提としているのです。