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第6回 パブリシティ権
弁護士 松 谷 卓 也
■1 プロ野球選手と球団との肖像権を巡る訴訟
子供の頃,野球選手の名前の入ったゲームソフトや野球カード等を集められた方は多いと思いますが,これらの商品における選手名や写真の使用料は,現在の運用としては,販売業者等から球団が受取り,その一部を選手に分配するという方法が取られているようです。
しかし,球団がこれらの使用料を得ることに正当な根拠はあるのでしょうか。
かかる点に疑問を呈した野球選手34人が,所属する球団を相手取り,選手名や肖像の使用許諾権は選手自身に帰属するものであり,球団側には属しないとしてその確認を求めた訴訟が提起され,その判決が,本年8月1日に下されました。判決では,野球協約の統一契約書の条項により,球団には使用許諾権があるとして,選手側の使用料請求は棄却されました。
■2 肖像権とパブリシティ権
肖像権とは,「人がみだりに他人から写真をとられたり,とられた写真がみだりに世間に公表,利用されることのないよう対世的に主張しうる権利である」と,一般的に定義されています。
肖像権は,個人の人格権としてのプライバシー的な側面,商業的価値の両面の意味を有しています。
そして,まだまだ認知度は低いと思いますが,パブリシティ権と呼ばれる権利があります。パブリシティ権は,「自己のアイデンティティーに係る営業的価値ある情報をコントロールする権利」と定義されており,プライバシー権が「自己のアイデンティティに関する情報をコントロールする権利」と言われていることと比較すると,そのなかで営業価値を重視した権利であることをイメージしていただけると思います。
■3 他の裁判例
パブリシティ権が問題となった過去の訴訟として,カレンダー業者が,「おにゃんこクラブ」の承諾を得ることなくおにゃんこクラブに属するメンバーの名前,写真が掲載されたカレンダーを販売したことに対して,カレンダーの販売の差止め,損害賠償請求を受けた訴訟(おにゃんこクラブ事件),王貞治選手の通算800号ホームランを記念してメダル業者が同選手の承諾を得ないで同選手の氏名,立像が刻まれたメダルを販売しようとしたことに対し,販売の差止めを受けた訴訟(王貞治メダル事件)等があり,いずれも,パブリシティ権を有する著名人本人からの差止め請求等が認められています。
■4 著名人以外の肖像権
では,著名人以外の一般人は,どうでしょうか。著名人は,名前や肖像が使用されるだけで商品が売れたり,人が集まったりという経済効果があり,著名人の名前や肖像は経済的利益に直結しています。また,著名人や著名人を育てたプロダクションなどは,その名前や肖像を「著名」にするまでに,相当の経済的な努力を行っています。これに対して,一般人は通常そのような努力は行っていません。したがって,一般人の場合は,パブリシティ権という権利としては認められないのですが,名前や肖像で,その人格的な権利が害される場合が起こらないとは限りません。
この例としては,家庭用サウナ一式を購入した著名人ではない一般人が,承諾なく,自分の顔写真と実名を当該サウナの広告に使用されたことに対し,業者に損害賠償請求を求めた訴訟があり,裁判所は,180万円の損害賠償請求を認めました。裁判所は,人格権としての肖像権が侵害されたと理解し,その無断使用により受けた精神的苦痛等を考慮して損害賠償を認めたわけです。
■5 まとめ
さて,冒頭に掲げた訴訟は,本年8月15日に,選手側から控訴が行われ,今後も訴訟が続きます。パブリシティ権の議論をご理解いただいたうえで報道に接していただきますと,より興味をもっていただけると思います。
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